【化粧品OEMに欠かせない基礎知識8】化粧品に香りをつける「香料(着香剤)」について解説

【化粧品OEMに欠かせない基礎知識8】化粧品に香りをつける「香料(着香剤)」について解説

化粧品のイメージや使い心地を左右する要素として「香り」も重要なポイントです。成分の匂いを上手くマスキングするための効果から、心地よさを演出するもの、ブランドの“顔”を感じさせるもの、フレグランスのように香りそのものを楽しむためのものなど、さまざまな目的で使われていく香料。

今回は香料(着工料)に注目して成分やブレンド、処方について解説していきます。

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化粧品に香料が使われる理由

化粧品に香料を使う理由

化粧品に使われている香料は、大きく分けて2つの目的で使われます。1つは原料の臭いをマスキングするために使う。もう一つは化粧品のイメージを華やかに演出する、心地よい香りで楽しませるという目的で使われています。

香料として使われるのは、天然の植物の花・葉・果皮・種子・根・樹脂・木部などから抽出された精油(エッセンシャルオイル)、化学的に合成された香料(フレグランスオイル)の2種類。その種類は3,000を超え、さまざまな香りの組み合わせにより、新しい香りが日々生み出されています。

それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが良いということはありません。

香りを感じる嗅覚は他の五感とは異なり、脳の本能や情動をつかさどる場所(大脳辺縁系、旧脳ともいう)へ直接刺激を与えます。このため、感情を動かしたり、リラックスさせたりといった効果が得やすいことは事実。

時代の空気やファッション性を追求した香水などは、パフューマ―(調香師)と呼ばれる人たちが生み出す芸術作品でもあるのです。

化粧品によく使われる香料の種類について

化粧品で使われる香料の種類について

化粧品に使われる香料は天然精油(エッセンシャルオイル)と合成香料(フレグランスオイル)の2つ。それぞれを詳しく見ていきましょう

1.天然精油(エッセンシャルオイル)は一切人の手を加えない自然からの贈り物

天然の香料には動物性のものと植物性のものがあります。しかし、動物性の香料(いわゆるムスクと呼ばれるジャコウシカやジャコウ猫、カストリウムなど)はワシントン条約により、非常に入手困難で現在ではあまり使われることがありません。

バラのエッセンシャルオイルは大変希少

精油(エッセンシャルオイル)は植物の香り成分を抽出したエッセンス。花や葉、果皮、種子、樹脂、根などから採取された100%天然の芳香物質です。例えば、ラベンダーなら花穂100~200㎏で1㎏の精油が抽出できますが、ローズなら花3~5トン必要というように、植物により抽出できる量がさまざま。

アロマテラピーなどで使われている精油の値段が高いのもうなづけますね。

天然精油(エッセンシャルオイル)はどのように抽出される?

精油の抽出方法には以下、4つの方法があります。

水蒸気蒸留法はポピュラーな抽出方法
精油を抽出する水蒸気蒸留法
  1. 水蒸気蒸留法:最もポピュラーな方法。水蒸気で蒸して揮発した香り成分を冷やし、精油が水に溶けにくい(油溶性・脂溶性)性質を利用して分離させてとる
  2. 圧搾法:果実の果皮から香り成分を取る方法。果実の香りは果皮にある「油胞」に多く含まれており、絞り出して抽出する
  3. 溶剤抽出法(アブソリュート):ヘキサンや石油ベンゼンなどの有機溶剤で香り成分を抽出する方法。デリケートな花の香りを再現しやすい
  4. 超臨界流体抽出法:液体ガス(二酸化炭素やブタンなど)に植物を入れて香り成分を抽出する方法。圧力を弱めるとガスは蒸発し、精油成分が残る性質を利用

果皮の香りは温度で変質しやすいため、低温で圧搾する方法(機械が熱をもたないようゆっくり絞る)がポピュラーです。しかし、光に当たるとアレルギーや日焼けなどを引き起こす成分(フロクマリン)が抽出されてしまうため、水蒸気蒸留法で抽出したり、抽出後にフロクマリン成分だけを除去したもの(アロマテラピーで認められているのはベルガモットのみ)がつくられます。

デリケートな花の香りを取る油脂吸着法
デリケートな花の香りを抽出する油脂吸着法

3.の方法は、もともと伝統的に行われてきた手間のかかる抽出方法「油脂吸着法(冷浸法・温浸法)」を工業的に実用化したもの。有機溶剤が残留する心配があることから、アロマテラピーでは香りとして使う以外には使用(マッサージなどに使わない)しません。

また、4.の方法は費用がかかるため、できた精油は大変高額になります。

天然精油(エッセンシャルオイル)の分類や注意点

精油は香りのイメージ(植物種)で分けられる“フレグランスチャート”を使用するのが一般的。主な分類は以下の通りです。

  • ハーブ系:ペパーミント、ローズマリー、クラリセージ、マジョラム、バジルなど
  • 柑橘系:ベルガモット、オレンジ、レモン、メリッサ、レモングラスなど
  • 樹木系:サイプレス、シダーウッド、ユーカリ、ジュニパーなど
  • スパイス系:シナモン、ブラックペッパー、ナツメグ、カルダモンなど
  • 樹脂系:乳香(フランキンセンス)、安息香(ベンゾイン)、没薬(ミルラ)
  • 花系:ローズ、ネロリ、ジャスミン、カモミール、ラベンダーなど
  • エキゾチック系:サンダルウッド、イランイラン、ベチバー、パチュリーなど

精油の成分は天然の芳香性化学物質(有機化合物)。人の心身に影響を与える活性物質を高濃度に含みます。日本では“雑貨”扱いですが、アルコール類やアルデヒド類など殺菌効果・抗菌効果を発揮する成分が含まれており、その効果を期待して化粧品に配合する場合も。

精油に含まれる殺菌・抗菌作用である1,8-シネオール(ユーカリに多い)やチモール(タイムに多い)、オイゲノール(クローブに多い)、サリチル酸メチル(ウインターグリーンに多い、アスピリンの材料)などは、化学的に合成され、医薬品などにも応用されています。

ちなみに精油は水に溶けにくい「油溶性・脂溶性」の香り成分。ハーブティーなどで抽出される香りは「水溶性」のものです。アルコールを使ってエキスとして抽出する方法もあります。

天然精油(エッセンシャルオイル)の主な種類と特徴について

主な精油の香り、成分などを紹介

成分 特徴
ラベンダー ・古代ローマ時代から使われてきた薬用植物
・甘くウッディーなトーンがあり、ハーブらしい香り
・肌への刺激が少なく万能オイルといわれる
・果物が完熟した時に出るエステル類(リナリルアセテートなど)が多く、鎮静力に優れた香り
・香料としては安価なラバンジン(ラベンダーとスパイクラベンダーの交雑種)が使われることが多い
ローズマリー ・ラベンダーと並び古くから使われてきた薬用植物で、「マリア様のバラ」と呼ばれることも
・ハーブ調のシャープで刺激的な香りを持つカンファ―(樟脳)や1,8-シネオールの香りが特徴
・低血圧や集中力、記憶力アップによいとされている
・1,8-シネオール(オキサイド類)が主成分で呼吸器系の症状緩和や肩こり、筋肉痛のケアにおすすめ
ペパーミント(西洋はっか) ・古代ギリシャ、ローマ時代からよく使われてきた薬用植物で、解毒剤として使われたことも
・清涼感のあるスーッとしたクールな香り
・歯磨き粉やガム、胃薬などに使われるなど日常的な香り
・主成分であるメントールは粘膜を刺激して鼻づまりを解消したり、鎮痛作用がある
・日本の在来種は和薄荷、ペパーミントより甘さとソフトな清涼感があるスペアミント(オランダハッカ)もある
オレンジ ・古くから親しまれてきた柑橘系で、漢方でも血行を良くして風邪の症状に使われる陳皮(チンピ)としても有名
・アロマテラピーではスイート種が多く使われ、ネロリの香りが採れるビター種(ダイダイなど)もある
・憂鬱な気分を吹き飛ばし、明るく楽しい気持ちにしてくれるアップリフトの香り
・主成分であるリモネンには肝機能を整える作用がある
・ご当地コスメなどで、地元で採れた柑橘系を使った和製精油も増えてきた
ゼラニウム(ニオイテンジクアオイ) ・正式にはペラルゴニウム(テンジクアオイ属)という(ゼラニウムはフウロソウ属)
・フレッシュなフローラルグリーンの香りでバラ臭がある
・ホルモンバランスを整える作用があり、肌の皮脂バランスを整えるとされている
・アルコール類(バラ臭のあるゲラニオール、志都呂ねろーる、リナロールなど)を多く含むので、殺菌作用や気分のリフレッシュに役立つ
・産地により香りが異なる
イランイラン ・フィリピン諸島が原産地の花で高級なフローラル系香水には欠かせない香りのひとつ
・強く濃厚なつんとくるフローラル調の甘い香り
・海外では大変好まれており、石けんなどによく使用される
・アルコール類やエステル類が多く気分を高揚させたり、ストレスを緩和する効果も
・香りが強くたくさん抽出できるため蒸留時間ごとにグレード分けされている(最高グレードはエクストラで、石けんなどに使われるのはファースト、セカンドクラス)
ローズ ・バラの花びらから抽出される香りで、水蒸気蒸留法で採られたものを「ローズ・オットー」、溶剤抽出法で採られたものを「ローズ・アブソリュート」と呼ぶ
・フレッシュでややスパイシー、エレガントなフローラル調の香り
・精油を蒸留した水を芳香蒸留水(ローズウォーター)として活用
・ゲラニオールやフェニルエチルアルコールなどはバラ臭を特徴づける香りではあるが、その他の微量成分がわからないため、本物のバラの香りを再現することができていない
・敏感肌にもやさしく美肌効果がることでも知られている
パチュリー ・しそ科の植物で別名プチャ・ブートと呼ばれ、ダイエットの香りとして注目された
・重く濃厚で墨汁や土臭いようなバルサム調の香り
・石けんやオリエンタル調の香水に欠かせない香り
・主成分であるパチュロールは虫よけにも最適で、消毒殺菌効果がきたいできる
・パチュレンはアズレン(カモミールの抗炎症作用成分)と構造が似ており、肌のひりつきやかゆみを抑える効果が期待できる

本物の精油が持つリラックスやリフレッシュ効果を期待し、手作り化粧品などにもよく使われています。ただ柑橘系などは酸化しやすいため、一般的な化粧品に使用する場合、品質維持が難しい場合も。

また、自然の生み出すものなので、常に同じ香りを安定して再現できるかどうかという問題もあるので、慎重に検討する必要があるかもしれません。

2.合成香料(フレグランスオイル)は天然の精油をベースに化学的に合成された香り

合成香料の特徴について

合成香料には、天然に存在している成分を取り出し、組み合わせて合成した「ネイチャーアイデンティカル」と、天然に存在しない成分から作られる「アーティフィシャル」のがあります。化粧品に使われる香料は「フレグランス」、食品の香りづけで使われる「フレーバー(食品添加物」と呼びます。

フレグランスオイルは、アロマテラピーでは使われませんが、化粧品の世界では一般的。品質が安定していることと安全性が確認された成分として使われています。

中でも香水の香りとして人気の高いムスクや鯨の結石からとれる龍涎香(アンバーグリスク)は、合成香料として古くから研究され続けており、さまざまな種類のムスクが開発されています。

この他にもバニラの香りがする「バニリン」や桜餅の香りがする「クマリン」、はっかの香りがする「メントール」、ローズの香りに近い「シトロネロールやゲラニオール」など様々な合成香料があり、イメージに近い香りを再現することが可能です。

合成香料のメリットはなんといっても安定性があること。季節や環境に左右されず、常に同じ香りを再現できます。また、天然精油に含まれる刺激成分やアレルギーの原因になる成分があらかじめ排除することもできるので、むしろ安心して配合できる点も見逃せません。

3.香料(天然精油)のアレルギーを引き起こす可能性がある成分について

化粧品に使う香料でアレルギーの可能性がある成分

日本の化粧品は全成分表示が義務付けられていますが、配合濃度が1%以下の成分は順不同で記載可能、香料として配合される成分の一つひとつは表示義務がないので「香料」とひとまとめにして記載ができます(香料として化粧品に配合される場合は、0.01~0.001%程度)。

しかし、ヨーロッパでは26種類の香料成分が決められた量以上含まれる場合は、アレルゲン物質として表示しなければなりません。これらの成分は天然の精油にも含まれているのもあるので、「天然=安全」とは限らないので注意しましょう。

以下、アレルギーの可能性があり、天然精油にも含まれているものをダイジェストにご紹介します。

  • 安息香酸ベンジル:イランイラン、ジャスミンアブソリュート、ベンゾインなど
  • オイゲノール:イランイラン、ジャスミンアブソリュート、クローブ、バジルなど
  • ゲラニオール:ゼラニウム、イランイラン、ネロリ、ローズなど
  • シトラール:ネロリ、ユーカリ、メリッサなど
  • リモネン:オレンジ、レモン、ベルガモット、レモングラスなど

ただし、精油の場合、肌を刺激する可能性がある成分が含まれていても、濃度に注意すればトラブルを起こす可能性が低いといわれています。その理由は一緒に含まれている別の成分がアレルギーを抑える働き“クエンチング効果”を発揮するからです。

例えば、レモングラスには皮膚刺激の可能性がある「シトラール(アルデヒド類、レモン様の香り)」が多く含まれますが、同時にリモネン(テルペン類)が含まれることで、皮膚刺激を抑える効果があります。しかし合成のフレグランスオイルでレモングラスの香りを再現すると、シトラールだけでよいので、肌に使用すると必ず皮膚刺激が起こります。

精油には数十~百種類の芳香性物質(有機化合物)が含まれており、そのすべてが解明されているわけではありません。このため、いくら化学が発達しても天然の香りを再現することはほとんど不可能

いまだにバラの香りを人工的に再現できないのも、ごくわずかしか含まれない微量成分の正体が解明されていないから。天然の香りとは自然が創り出すまさに芸術作品というわけですね。

天然精油と合成香料、それぞれのメリット・デメリットを理解して上手に活用しましょう

天然か合成かどちらにも一長一短ある

天然精油と合成香料、それぞれのメリット・デメリットは以下の通りにまとめました。

<天然精油のメリット>

  • 植物が持つ自然のままの香り、深みや奥行、複雑な香りのハーモニーが魅力
  • 生理的な活性力を持つ芳香性物質が濃縮されており、心身に働きかける(リラックスやリフレッシュなど)作用がある

<天然精油のデメリット>

  • 同じ植物でも時期や生育環境、抽出方法により品質や香りが異なる
  • 酸化しやすいものもあり、品質の維持が難しい

<合成香料のメリット>

  • 常に香りや品質が安定している
  • 自然界に存在しない成分で魅力的な香りを創造できる

<合成香料のデメリット>

  • 人によっては人工的な香り(奥行や広がりがないなど)と感じる場合も
  • 精油のような生理的な活性力はない

どちらにも一長一短あり難しいところですが、強い香りが苦手と感じる方も少なくありません。また、自然の香りであっても好き嫌いがあり、香りが苦手でその化粧品が使えないということもあります。

どのような香りづけをするのか、無香料にするのかなど、化粧品のプロであるOEMメーカーと相談しながら進めてみてはいかがでしょうか。

化粧品OEMについて詳しく知りたい方、ロットや費用の相場感を知りたい方はこちらをご覧ください。
>>化粧品OEMとは?かかる費用や、OEMメーカーの選び方を徹底解説

▼参考文献
「美肌のために、知っておきたい 化粧品成分表示のかんたん読み方手帳」(発行:株式会社永岡書店)
「美肌成分事典」(発行:株式会社主婦の友インフォス)

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