化粧品D2Cの成功事例や各メーカーのDXへの取組みを紹介!個人でもOEMでビジネスチャンスをつかむ方法【市場トレンドリサーチ(7)】
コロナ禍が長引き、化粧品市場が大きく変化しています。マスク着用が日常化し、口元の化粧品が売り上げが減少。その一方で、オンライン会議の影響などで、男性コスメの売上が好調です。
百貨店などの対面販売は軒並み不調で、通販などが売り上げを伸ばし、新規参入メーカーにも大きなチャンスが訪れるなど、オリジナル化粧品を企画・開発・販売してみたい個人事業主にも商機があるといえるでしょう。
今回はD2C(消費者とダイレクトに取引する販売方法)やDX(デジタルトランスフォーメーション=IT活用でビジネスモデルや組織を変革)について徹底解説。異業種や個人事業主でも、売れるコスメを企画するための手段として、OEMを含めどう活用してけばいいのかを検証してみます。
新規でOEMビジネスを始めたいと考えている方、OEMについて詳しく知りたい方、ロットや費用の相場感を知りたい方はこちらも参考に。
>>化粧品OEMとは?かかる費用や、OEMメーカーの選び方を徹底解説
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化粧品業界で大きなビジネスチャンスをもたらす“D2C(Direct to Consumer)”のメリット
かつての化粧品販売は、店頭販売や訪問販売が主軸で、ブランドイメージを構築するために大規模な広告や宣伝、小売店の協力が不可欠でした。それゆえ、資本を多く持つ大手化粧品メーカーや営業力がある企業などが有利。
ベンチャー企業や個人事業主では太刀打ち出来ませんでしたが、最近では自社ECサイトやSNSを活用するD2C(仲介業者を介さずに商品を消費者まで直接届ける販売方法)が台頭。コロナ禍もあり、店頭販売が苦戦する一方で大幅に売り上げを伸ばしています。
さまざまな業界がD2Cを取り入れる中、化粧品業界は親和性が高いことから、大手メーカーも重視するところが増加中。どんな効果が期待できるのかをまとめてみました。
ユーザーの声を反映した商品企画や改善がしやすい
D2Cの最大の強みは、顧客に直接販売するので、フィードバックが得やすいところ。どのぐらいの頻度で購入するか、顧客の属性(年齢層や住まいなど)などもダイレクトに得られます。
肌診断やアンケートなどを行うことで、生活習慣や気になる肌の悩み、商品への率直な感想などの意見が吸い上げやすくなり、新しい商品企画や既存商品のリニューアルに反映しやすいのもメリット。
「ユーザーとともに成長する化粧品ブランド」として印象付けることができるため、長期的な関係を築きやすくなります。
高品質な商品を低価格で提供可能
D2Cなら仲介業者を介さず、顧客に商品を届けられます。その分の中間マージンを削減できます。そして何よりも大きいコストカットになるのは、店舗を借りることで毎月かかる固定費(家賃、光熱費、人件費など)がないこと。
その分の費用を商品企画や開発に回せるので、高品質かつ、低価格が実現できます。ユーザーにとっても、メーカーにとっても双方メリットがあるということですね。
ブランドの世界観や価値観、魅力を伝えやすい
最近の若い世代で顕著なのは、SNSで情報を得ていること。かつては外食の際の店探しで活用されてきたグルメサイト離れが顕著で、InstagramのハッシュタグやGoogle検索で店探しをする人が増えています。
化粧品に関しても、雑誌や口コミサイトよりもSNSでの評価を重要視する傾向は顕著で、今後は今まで以上に大切なコミュニケーションの場となることでしょう。
D2Cのビジネスモデルは、SNSとの親和性が高いのが特徴。顧客とダイレクトにつながることで、リアルタイムに商品情報を配信できますし、会社のビジョンや商品に込めた思い、ブランドの魅力を伝えやすいところが最大のメリットです。
顧客からの反応や反響もストレートに伝わってくる、双方向コミュニケーションを行うことができるので、ブランドへの愛着や帰属意識、コアなファンづくりに役立つのがポイントとなっています。
“D2C(Direct to Consumer)”のデメリットは?
一見するとメリットばかりのように感じるD2Cですが、もちろんデメリットもあります。
一つ目はECサイト構築に時間が費用がかかること。ただ、こちらは低コストでネットショップが開設できるECプラットフォームが増えてきたので、個人でも気軽にオープンさせることができるようになりました。
しかし、問題はオープンしてからです。売り上げを伸ばすためには、集客のための費用やノウハウが必要なことを見落としがち。
多くの方が『よい商品をつくったから、ホームページをつくり、ECサイトを立ち上げただけで自然と売れる』と勘違いしてしまいます。
より多くの人に自社のサイトやSNSを見てもらうためには、ネット広告や売れるためのクリエイティブ、検索結果でヒットさせるための工夫が必要です。
また、ていねいなお客様対応や広告のチューニング、商品の改善などを行うには人的リソースも重要。1人で何もかも担うというのには限界があります。
簡単にECサイトがオープンできるからといって、深く考えずにブランドを立ち上げると失敗する可能性だってあるのです。
このようにD2Cビジネスには難しさもありますが、成功すれば大手メーカーに負けない収益を上げることもできるのも魅力。他社の事例を参考にしながら、D2Cで化粧品ビジネスを立ち上げ、成功するためのヒントを探っていきましょう。
D2Cで化粧品ビジネスを立ち上げて成功した事例
D2Cで化粧品ビジネスを立ち上げた事例の中で、大企業でないベンチャーや個人事業主などに絞ってご紹介していきます。
個人ブログで12億ドルのビジネスに成長させた「Glossier(グロッシアー)」
D2Cの成功事例として有名なのは、ニューヨークの人気美容ブロガーのエミリー・ウェイスさんが2014年に立ち上げたコスメブランド「Glossier(グロッシアー)」でしょうか。わずか4年で売上高が1億ドルを突破。2019年3月には1億ドルの資金調達を実施し、12億ドルの価値がある企業になったとウォール・ストリート・ジャーナルで報道されました。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- 美容ブログ「INTO THE GLOSS」を立ち上げ、開設直後から1000万PVを超えるファンを獲得
- 獲得したファンコミュニティに対し、オリジナルブランド「Glossier」販売前からSNSを中心にプロモーションを展開
- 発売後は顧客からのフィードバックを受付け、レビューに基く商品開発を実施
美容ブログでは、セレブたちの美容法について率直なインタビューを行い紹介。美容好きからの支持を集め、実際に使用した化粧品のレビューを投稿してもらえるように。
その後、仕事を辞めたウェイスさんはブログに専念。編集経験のあるスタッフと共にブログを刷新して投稿数を増し、資金調達しながら、ファンを獲得していきました。
ブログを通じ「自分たちが欲しい化粧品を自分たちで作る」という姿勢を一貫して示してきたこと。コミュニティからの意見を取り入れ、商品に反映させることでファンとの絆を深めてきたこともビジネスを後押ししました。
ブログは主にミレニアル世代から支持を集め、Instagramのフォロワー数は270万人(2021年10月時点)となっています。
美肌づくりへの強烈なこだわりが共感を生んだ「meeth(ミース)」
「meeth(ミース)」はファッションモデル、タレント活動を経て、美肌研究家としてかつどうする、ソンミさんが2019年に立ち上げたスキンケアブランドです。「美肌は最高のジュエリー」をコンセプトとするmeethは、ソンミさんが本当に良いと思えるスキンケアアイテムにとことんこだわって作ったもの。
日本を始め、中国や台湾、シンガポールなどでもたちまち人気に。しかし、ブランドデビューからわずか1年でリブランディングを行い、“日本からアジア女性の肌を美しく整えてアジアを代表するブランド”としてロゴ、製品パッケージを一新し、環境への配慮にもこだわった商品になっています。
2020年9月にはショールーム兼実店舗「meeth touch up lab」をオープン。12月からは全国各地で期間限定ポップアップストアをオープンし、自らも店頭に立つなど、顧客とのコミュニケーションを充実させています。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- ソンミさん自身が試してよかったスキンケアアイテムを厳選して販売するセレクトショップを運営し、“美肌オタク”であることを認知してもらってきた
- ユーザーとして自分が欲しいものを製品化、アイテムごとにOEMメーカーを変え、一緒に開発
- 成分や処方、製法にとことんこだわりつつも、D2Cならではの高品質、手ごろな値段をキープ
- インフルエンサーとして活動してきた実績を活かし、広告宣伝ではなくSNSを通じた“共感”を生むコミュニケーションを実践
- 社員の採用もすべてInstagram、社内外にファンをつくり、それを基盤として経営・マーケティングを行っている
特にOEMメーカー選びは自分で探し、現地に足を運んで直接交渉。自分が製品化したい商品を実現してもらうため、アイテムごとにOEMメーカーを変えるというこだわりようです。
試作を何十回と繰り返し、2年かけて完成させたもの、開発スタートから2年以上経過しつつもまだ製品化できない商品もあるそうです。その企画・製造過程、成功も失敗もすべて包み隠さずリアルタイムにSNSで発信。
大勢のフォロワー獲得ではなく、ディープなファンを育てることで圧倒的な支持を受けています。
2022年1月下旬からは、フード事業「&meal」も立ち上げ、体の内側から美肌をつくるビジネス展開をスタートさせています。
美容動画メディアDINETTE(ディネット)のコミュニティから誕生「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティアップ)」
DINETTE株式会社の代表取締役社長・尾崎美紀さんは、名古屋出身の1993年生まれ。大学卒業後、いくつかの企業から内定をもらうも、「世の中に、たくさんのカワイイを作りたい」を実現しようと2017年に起業しました。
Instagramを軸に「今日なりたい私を叶える」をテーマとした美容分野に特化した分散型動画メディア「DINETTE」をスタート。運用して5か月でエンゲージメントが美容メディアジャンルにおいて、国内最大規模の実績(平均動画再生数No.1)を達成させています。
また、同時期にライブストリーミングでメイクハウツーなどを中心に展開する、インフルエンサーマーケティング「DINETTE GIRLS(ディネットガールズ)」も始めました。
ビューティジャンル特化のインスタグラマーであるDINETTE GIRLSを1000人規模でネットワーク。リアルを追求したユーザーファーストなコンテンツで、動画タイアップ、広告タイアップも手掛けています。
そして2019年2月にD2C事業に参入し、オリジナルブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を立ち上げ、2020年5月には株式会社セレス、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス、D2C&Co.株式会社(丸井グループ)、株式会社MTG Ventures、株式会社サティス製薬の計5社を引受先とした第3者割当増資を実施するなど、約3億円の資金調達に成功。
D2Cコスメブランドとしてトップクラスのメーカーとなっています。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- 化粧品ブランド立ち上げ前に、Instagramを軸としたファン囲い込みを徹底して実践
- コミュニティへのアンケートを重ねてユーザーの声を収集し、それをベースにコスメブランドを立ち上げて、商品開発を行った
- 「思わずSNSに投稿したくなる」をテーマに開発した可愛いパッケージ
- 人気アパレルブランドとコラボすることでファッション業界でも話題に
- 社員の採用もすべてInstagram、社内外にファンをつくり、それを基盤として経営・マーケティングを行っている
化粧品の場合、ブランドが出したい商品や伝えたい世界観が先行して企画・開発する例が多くありました。ブランドの世界観に憧れて購入するというスタイルです。
しかし、ブランド力のない同社の場合まずはお客様の声を聴き、その悩みに答えたプロダクトを企画・開発。SNSでもフォロワーの声に対して、丁寧なコメントバックやDM返信を行い、信頼関係を築いてきた上で化粧品を開発しています。
化粧品の価格も原価の相場を度外視し、初期投資を惜しみなく行って抑えた価格で展開。インフルエンサーに依頼し口コミで広げるという、アメリカで躍進しているコスメブランド「Glossier」の手法を採用し、広告宣伝費をかけずにファンとのコミュニケーションの中で売り上げを作ってきたのが成功につながりました。
あえて顧客からのフィードバックを受けずに急成長、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」
株式会社バルクオムの代表取締役CEO・野口達也さんは、東京都出身の1989年生まれ。大学中退後、いくつかの起業を経て、2013年に男性化粧品ブランド「BULK HOMME(バルクオム)」を立ち上げました。
2017年に組織再編を経て株式会社バルクオムを設立。2018年メンズスキンケア通販部門のハイクラスカテゴリーで売り上げとシェアNo.1を獲得し、12月には総額約5億円の資金調達を達成しました。
さらに、2020年には総額で約15億円の増資・融資を受け、木村拓哉さんを採用したテレビCMを放映するなどさらなる注目と話題を集めました。2020年の年間売上は前年比約150%増、現在の年間売上は34〜35億円ともいわれています。
バルクオムの製造は株式会社サティス製薬のOEMです。工場が埼玉県吉川市にあることから、2021年よりふるさと納税の返礼品になっています。
野口さんの発想はユニークで「世界でNo.1になれる領域」を探し、男性向けスキンケアブランドにたどり着いたそうです。知識も経験もゼロで、常識やバイアスにとらわれず、高品質な商品を開発。
男性の場合、一度商品やブランドを気に入れば長く使い続けるという傾向があるので、直販による定期購入、いわゆるサブスクリプションでの販売を展開しています。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- Instagramを中心とするSNSマーケティングを実践、「#(ハッシュタグ)」を使ってブランド名を積極的に活用
- ブランド広告と購入させる広告を使い分けてマーケティングやクリエイティブを精査
- 商品の品質の良さに自信があり、定期購入(サブスクモデル)で勝負。継続使用で効果を実感したユーザーがSNSで拡散、新規顧客獲得するというサイクルをつくった
- マニア向けではなく、一般ユーザーの目線での商品企画や開発、1カテゴリー1アイテムでユーザーを迷わせない
- 明確なターゲット層を定めずに、商品に反応してくれる人に販売するため、接触チャネルや購買形式の変化に敏感に反応する
圧倒的なクオリティを実現している自負があるため、顧客からのフィードバックもほとんど受けていないというのが特徴的。「バルク(中身)で勝負する」という姿勢を強く打ち出し、ブレないブランド哲学を貫いているところがらしさかもしれません。
商品を販売するための手法、マーケティングやプロモーション方法などについては、顧客からのフィードバックを重視し、ブランドを育てているのが女性向けコスメとは異なる点といえます。
処方は19,530通り以上と数で圧倒「mixx(ミクス)」
mixx(ミックス)は、株式会社FAVO(ファボ)が2018年に立ち上げたブランド。パーソナライズヘアケア用品(シャンプー・トリートメント)を提供しています。
FAVOではもともと髪のプロが教えるヘアケアの総合情報メディア「hairy」を運営。その中で、髪の悩みやヘアケアに対するニーズは人それぞれというのを痛感し、それに応えるにはオーダ―メイドしかないという結論に達したそうです。
mixxは、Webサイトから所要時間わずか1分、8つの質問に答えるだけで、シャンプーやトリートメントをオーダーメイドできます。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- ヘアケアの総合情報メディアを通じ、顧客の抱える課題とそれに応える商品開発を叶える土壌づくり
- アルファベット8文字以内で名前をオリジナルで入れる印字サービスを行い、自分だけの1本という特別感を演出
- ノンシリコンや90%が天然由来成分など、ナチュラル系の処方で健康意識の高いユーザーに支持を受けた
- LINEアカウントでアフターサポートを行い、髪やヘアケアに関する悩みや要望を丁寧にくみ取る体制も整備
購入方法は定額購入(サブスクリプション)ですが、処方を途中で変更可能で、自分だけの1本を追求できるところも人気のポイント。
基になる数種類の基材にコート剤や香料、色素などオーダーに合わせてブレンドするため、一つひとつの工程が手作り対応。OEM工場を探すのに大変苦労したとのこと。
大きな広告などは行っていないものの、しっかりと業績を伸ばしているD2Cブランドです。
パーソナライズと密な顧客とのコミュニケーションで躍進したD2Cブランド「MEDULLA」
香りを含め5万通りの組み合わせから髪質にあったお手入れを提案するパーソナライズヘアケア「MEDULLA(メデュラ)」。スマホでの10の簡単な質問とカメラ撮影による解析から肌状態を診断してオリジナルスキンケアを提案する「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」。
2つのブランドを展開する株式会社Sparty(スパーティ)は2017年に創業。 “一人ひとりの個性を価値化したい” という想いのもと「色気のある時代を創ろう」をミッションに掲げ、パーソナライズを基軸としたD2Cブランドの展開を行っています。
2019年12月からは丸井グループ、Xテックベンチャーズ、アカツキ、ジンズホールディングスを引受先とする第三者割当増資により約6億円の資金調達に成功しています。
メデュラは2018年5月から発売開始し、2020年1月には月2億円の売上、会員数約8万人と順調に売り上げを伸ばしました。スキンケアブランド、ホタルは2020年5月から発売開始しています。
さらに美容室でメデュラを導入する店舗も増加。在庫を抱えるリスクがなく、顧客がメデュラを継続使用することで美容室側に定期的にマージンが入るところが強みです。2020年1月には全国150店舗を達成しました。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- 定期購入にカウンセリング機能を持たせ、オンタイムで最適なヘアケア&スキンケアを提案
- 継続使用してもらうことに主眼を置き、リアルイベントを定期的に開催することで密にコミュニケーションをとり続けている
- 市場や購買者という買い手の立場に立ち、買い手が必要とするものを提供する“マーケットイン”に振り切った戦略
- オンライン診断だけではなく、美容院と提携し、ヘアケアのプロを味方につけた
- フラグシップ店舗を丸井内にオープンさせ、商品をそこでは販売せず、へカウンセリングのみを実施し、SNSやECサイトでは反応しなかったユーザーを開拓
- 「髪質改善」ではなく「なりたいイメージに近づく」商品という訴求でときめきやワクワク感を提供
メデュラの場合、初期段階でのファン獲得施策は実施しておらず、継続利用する優良顧客を重視。継続して購入してもらうために「自社の掲げる世界観に共感してもらえる顧客を獲得する」という視点を重視し、デジタルではなく、リアルなイベントという場で伝え続けてきたことが成功のポイントといえます。
リリースして1年でパッケージも中身もフルリニューアル。D2Cの強みであるユーザーとの近い距離間、ベンチャー企業のフットワークの軽さでも強さを発揮してきました。
また、今注目のクリーンビューティへも取り組んでおり、高機能とサステナブル両立。廃材を活用した処方開発やリサイクル原料をパッケージに採用するなど時代の流れも意識したブランドづくりを行っています。
アパレルブランド発信、洋服とマッチするリップスティックのみのコスメブランド「Chérize(シェリーゼ)」
D2Cアパレルブランドでわずか3年間で人気ショップになった「Randeboo(ランデブー)」、洋服に合わせやすいリップスティックのみを販売するコスメブランド「Chérize」。平均年齢が22歳という株式会社Ainer(エイナー)が展開しています。
株式会社Ainer(エイナー)は、12歳の頃からモデルとして活躍してきた活動してきた山本正華(せいか)さんと、公私ともにパートナーである阿部卓真(たくま)さんが、10代の時に経験ゼロで立ち上げた会社。アパレルブランドであるランデブーは、セレクト商品販売からスタートし、徐々にオリジナル商品を増やし、ファンを増やしていきました。
創業から2年でInstagramフォロワー数約7万人を突破。ファッション誌で “ネオ” アパレルブランドとして注目を集めるように。また、アパレルブランドとして日本初の人生に寄り添う相談サービス「MORE CUSTOMER」をLINE@で展開。
2019年4月には“大切な人と会う5分前に”をコンセプトに、洋服に合わせやすい=Randebooの洋服とマッチするリップスティックのみを販売するコスメとしてシェリゼをスタートさせました。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- アパレルやコスメ業界未経験であるため、固定観念にとらわれない柔軟性が強み
- InstagramやLINEを使い、ファッションだけではなくライフスタイル全体を通じ、顧客との近い距離をキープ
- アパレルブランドの世界観に共感したファンを上手に取り込み、メイクアップを含めたトータルコーディネートが提案できる
現在ではオンラインでのD2C販売だけではなく、新宿ルミネ2に実店舗をオープンさせるなど、多角的な展開も。ブランドの世界観に共感するコアなファンをしっかり取り込んでいるところが成功のポイントといえそうです。
サロンクオリティをセルフで、コロナ禍で躍進したCOLORIS(カラリス)
2019年9月に誕生、日本初のパーソナライズヘアカラーの定期通販サービス「COLORIS(カラリス)」。Web上で髪の状態をカウンセリングし、11個の質問に回答するだけで、最適な処方を1万通り以上の組み合わせから提案してくれる株式会社ストークメディエーションが展開するパーソナライズドコスメです。
髪染めは美容室で行うか、市販品を購入して自宅で染めるかという選択でした。自宅での髪染めはリーズナブルな反面、染め上がりに不満を持つ声が多かったことに着目し、サロンで染めたような仕上がり感を実現するヘアカラー商品をオリジナルで提案しています。
発売から1年半で会員数は3万人を突破。2021年9月にはカウンセリング累計診断数は50万回を突破するなど好調な売れ行きをキープし、2022年2月現在では5万人の会員を集めています。
同社が成功を収めたポイントは以下。
- 国内トップシェアのOEMメーカー(資生ケミカル)で製造し、使いやすさにこだわった髪染め道具セットなど、商品クオリティの高さに徹底してこだわっている
- リピート購入してもらうためのサポートを徹底(LINEを使い、ユーザー以外でもCOLORIS専属カラーリストに相談可能で、購入属性ごとにコミュニケーションを最適化するなど)
- ブランドの世界観を伝える上質なパッケージデザイン
- 提供したい価値を妥協せずに届け続けられる価格設定(手に取りやすく、かつ商品開発へ投資できるだけの利益が見込まれる価格設定)
髪染めには2時間近く時間がかかるため、コロナ禍で二の足を踏むユーザーに支持されたという経緯があります。
カラリスはブリーランスの美容師を中心に提携を行ってきましたが、コロナ禍で売り上げ減少に悩む美容師や美容師からの問合せを受け、特別価格で提供するなどのキャンペーンも実施しました。2021年には、自社美容室や店舗のオープン等、オフラインへの展開など、サービス拡充を進めています。
D2Cでコスメブランドを成功させるには、良いものを作るだけではダメ
資本力や研究開発力のある大手化粧品メーカーと渡り合うには、同じことをやっていてもダメです。これまでの事例で見えてきたのは、ベンチャーならではのフットワークの軽さと柔軟さ。
ブランド立ち上げから1年でリニューアルを行う、ユーザーの声を常に反映させて改善し続ける“PDAC”サイクルを回し続け、精度を高めていく姿勢が感じられました。かといって顧客の声に振り回されるのではなく、ブランドとしての軸はブレずに共感やファンづくりを行い、深化させていくという施策です。
成功事例の中で“素人ならではの視点”というキーワードも上がっていました。化粧品業界の常識にとらわれず、「洗顔しながら肌を引き締める効果」「美容液で肌の汚れを落とす」など、これまでにない商品を生み出す原動力に。
また、SNSを活用している事例がいくつかありましたが、フォロワー獲得数にこだわるのではなく、どれだけ「熱心なフォロワーを獲得できているか」、量より質を重視しているブランドも多いことに気づかされてました。
以下、ポイントをまとめてみました。
- ブランドの価値観や軸をしっかり構築し、共感してもらえる独自の世界観を持つこと
- 顧客の声に耳を傾け、妥協せずに良いものになるよう改善し続けるPDACサイクルを回し続ける
- 従来のビジネスモデルでは解決できていない顧客のニーズを拾い上げ、柔軟な発想で企画・開発を行う
- 顧客との距離が近いというD2Cならではの特性を活かし、顧客を巻き込んだプロモーションを行う(SNSでフォロワーを獲得する、コミュニティを作るなど)
- カスタマーサポートの充実(正しく使ってもらう、不満やニーズを適切に吸い上げる、など)
- 自分たちの理想とする商品づくりを一緒に開発してくれる良きパートナーとしてのOEMメーカーを見つける
また、ヘアケア製品を展開するメーカーのように、自分たちだけの売上だけを見るのではなく、業界全体の活性化を考えた仕組みをつくることで、プロからも支持される体制を整えることもステップアップにつながります。
meeth(ミース)やCOLORIS(カラリス)のように、妥協せずに高品質な製品をつくるため、自分たちの要望に応えてくれるOEMメーカーを徹底して探し、活用することも重要。得意分野をプロに任せることで、自分たちは企画や販売、プロモーションに力を注ぐことができます。
D2Cならではの特性を理解し、そのメリットを上手く活用すれば、異業種からの参入や個人事業主でも売れる化粧品ブランドを立ち上げるチャンスはまだまだありそうですね。
D2Cから生まれたP2C(Person to Consumer)とは?
近年注目を集めているのが“P2C”ということば。インフルエンサーやYouTuberを軸としたD2C事業です。たくさんのフォロワーを獲得している個人を発信源として、広告ではなくリアルな情報発信を追求することで、コアなファンを取り込んでいく手法です。
P2Cは2020年頃から行われるようになり、インフルエンサーがより深く商品開発に関わり、自身のチャネルで商品に関するストーリーをフォロワーと共有できるのがポイント。小ロットでも開発を請け負ってくれるOEMメーカーが増えてきたことにより、個人でも参入しやすくなっています。
P2Cで成功を収めた事例としては、株式会社Direct Techがファッションモデルである古川優香さんとの協働プロデュースであるメイクアップブランド「RICAFROSH(リカフロッシュ)」でしょうか。
古川さんは2017年【さんこいち】というユニットでYouTubeチャンネルをスタート。Youtubeチャンネル登録者数が140万人、Twitter、Instagramはフォロワー180万人を超え、ティーンのカリスマ的存在です。2020年2月にデビューし、1年でシリーズ累計販売個数が100万個を突破するなど、話題を集めています。
コロナ禍で大手化粧品メーカーでも進むDX(デジタルトランスフォーメーション)化
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で、店舗への来店や対面式の接客に制限がでています。そんな中、D2Cで新たな化粧品ブランドが生まれ、大手化粧品メーカーに負けない売り上げをたたき出す事例が多く生まれました。
値段が高いにもかかわらず、パーソナライズドコスメが売り上げを伸ばしている背景には、情報過多や商品ラインナップの多さで自分に最適なものを選ぶのが難しいという状況も後押ししています。
DX(=Digital Transformation)とは、進化したデジタル技術を浸透させ、人々の生活をよりよいものに変革する、既存の価値観や枠組みを覆すような革新的イノベーションをもたらすものとして定義。データやデジタル技術を駆使し、商品開発やマーケティングに活かしていくということは今後ますます重要になってきます。
各メーカーの取り組み方はそれぞれですが、オンラインのみで完結する顧客体験もあれば、リアルなイベントや体験機会と併用しながら売り上げを伸ばしていくスタイルも。
化粧品業界において最も親和性が高いSNSを活用したプロモーションは欠かせない手段で、インフルエンサーやタレントがプロダクトを発信するP2C、一般ユーザーのSNSで作成されるコンテンツ(UGC=User Generated Contents)の活用、店舗販売員などの従業員によるデジタル配信(EGC=Employee Generated Contents)」も潮流の一つです。
これまではなかなかDXに舵を切れなかった大手化粧品メーカー(資生堂やポーラなど)も続々と参入している中、ベンチャーや個人事業主が化粧品事業を立ち上げて成功させるためには避けて通れない取り組みといえることでしょう。
・第1回:伸び続けるメンズコスメマーケットを調査
・第2回:コスメ市場のエシカル消費やSDGsについて
・第3回:異業種から化粧品業界へ新規参入
・第4回:ヒト幹細胞コスメ企画・開発のヒント
・第5回:女性特有の悩みをテクノロジーで解決するフェムテック
・第6回:パーソナライズコスメの徹底研究
・第7回:化粧品D2Cの成功事例や各メーカーのDXへの取組みを紹介
・第8回:越境ECの現状と成功させるカギは?
新規で化粧品業界参入を考えているならOEMメーカーを活用しよう
個人事業主や異業種からの化粧品や健康食品ビジネス参入に、大きなチャンスをもたらしてくれるD2C。大手メーカーに負けない商品開発やきめ細やかな顧客対応、最適化されたマーケティングでビックチャンスをつかめる可能性をまだまだ秘めています。
商品の企画をカタチにしてくれる製造のプロであるOEMメーカーを頼ることで、企業活動を販促やマーケティング、カスタマーサポートに注力することができるのも嬉しいポイント。
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